もものともしび

ほのかにひかる

深紅の宝石

仕事からの帰り道、八百屋の前を通る。道に面して、季節の果物が並んでいるのを見るのが好きだ。ビニール袋にぎっしり入った小ぶりないちごが売られていた時は思わず手に取ってしまった。なんだか童話に出てきそうな袋だったから。そこの八百屋はスーパーで買うよりも安く野菜や果物が手に入るので、つい立ち寄ってしまう。

最近になって、さくらんぼが並び始めた。艷やかな実がパックに詰められているのを見ると、どうしてかきゅんとする。多分、自分は同じものがぎゅうぎゅうと1か所に程よく集まっているのにときめきを感じてしまうらしい。だからなのか、ホテルの朝食バイキングでソーセージがたくさん入ったボウルを見るとわくわくする。

さくらんぼを手に取る。紫に近い深い赤。パックのラベルには「うまい!甘い!」と貼ってあった。八百屋がそこまで言うなら、と買って帰る。鞄の中にそうっとしまう時、宝石を隠すような気持ちになった。